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和歌山毒物カレー事件

事件概要

1998年(平成10年)7月25日、和歌山県和歌山市園部地区で行われた夏祭り会場において提供されたカレーを食べた67人が、腹痛や吐き気などを訴えて病院に搬送され、このうち、小4男児、高1女子生徒、園部第十四自治会長及び同副会長の4人が死亡した。当初、保健所は、食中毒によるものと判断したが、和歌山県警が吐しゃ物を検査したところ、青酸反応が出たことから青酸中毒によるものと判断された。しかし、症状が青酸中毒と合致しないことから、警察庁科学警察研究所が改めて調査した結果、亜ヒ酸の混入が判明した。なお、この際、使用された毒物の組成を調べるため、SPring-8が使用された。

逮捕

1998年10月4日、知人男性に対する殺人未遂及び保険金詐欺の容疑で、元保険外交員の主婦・林眞須美(はやしますみ、1961年7月22日生、事件当時37歳。以下、林さん)さんが、別途詐欺等容疑の夫と共に、和歌山東警察署捜査本部に逮捕された。さらに、林さんは、12月9日、カレーへの亜ヒ酸混入による殺人及び殺人未遂容疑で再逮捕され、同年12月29日、起訴された。

裁判

林さんは、容疑を全面否認し、動機も解明できない中、2002年12月11日の第1審判決公判で、小川裁判長は林さんの殺意とヒ素混入を認めた上で「4人もの命が奪われた結果はあまりにも重大」と断罪、求刑どおり死刑判決を言い渡した(即日控訴)。

 

続いて、2005年6月28日の控訴審判決で白井裁判長は、「犯人であることに疑いの余地はない」として第1審死刑判決を支持、林さん側の控訴を棄却した(上告)。

 

2009年4月21日、最高裁において那須裁判長は、

 

〇犯行に使われたものと同一の特徴を持つヒ素が被告宅等から発見されたこと

〇被告人の頭髪から高濃度ヒ素が検出されたこと

 

などから「被告が犯人であることは合理的な疑いを差し挟む余地がない程度に証明されている」とする一方、弁護側が主張した「被告人には動機がない」との主張に対し、「動機が解明されていないことは、被告が犯人であるという認定を左右しない」と退け、上告を棄却した。

 

2009年7月、林さんは、夏祭り会場に残された紙コップのヒ素が自宅から発見されたものと異なると主張し、再審を請求したが、2017年3月29日付で棄却され、2018年現在、大阪拘置所に収監されている。

冤罪の可能性

同事件については、当初から直接証拠がなく、状況証拠の積み重ねだけで有罪とされるなど不自然な点が多く識者から冤罪を指摘する声が多く上がっている。

 

また、裁判における唯一の物証であり、決定的な証拠とされた亜ヒ酸の鑑定について、現場付近で見つかった紙コップ、林邸の台所のプラスチック容器、カレーに混入されたヒ素が、すべて同じ起源であることが確認されたに過ぎず、弁護側の依頼で鑑定結果の再評価を行った京都大学大学院教授の河合潤氏によれば、3つは同一ではないと評価されている。

 

順を追って見ていくことにする。