和歌山毒物カレー事件 その3
2、ヒ素の科学鑑定の信憑性、その意味 1
①証拠の信憑性(プラスチック容器、青色紙コップ)
有罪の根拠として決定的とされたヒ素の科学鑑定についてである。カレーに混入されたヒ素と林さんの自宅から発見されたヒ素が科学鑑定などで同じものと認められたということである。このヒ素の一致の科学鑑定について多くの方が正しいものと思っているのではないか。
だから犯人は林さんであると・・・。しかし、これにも重大な問題があることは後ほど発覚することになる。しかし、多くの国民はこのことを知らないのではないかと思う。これについてできるだけ分かりやすくポイントを紹介したい。
林さんが逮捕された後、家宅捜索が行われた。この写真がその家宅捜索の時に撮影された林さんの家の台所の写真である。この台所のシンクの下の扉を開けたところにプラスチック容器が入っていたのである。
そしてそのプラスチック容器(写真(j))には白アリ薬剤と書いてあったと。ここから亜ヒ酸の粉末が発見されたというわけである。
すぐに疑問に思うのは、家宅捜索が始まり4日間経って、このプラスチック容器がようやく発見されたという点である。当日動員された捜査員は80名で、朝から晩まで捜索をやっていたわけである。その状況で4日間経ってからようやく発見されると。このプラスチック容器は台所の下の開き戸を開けばすぐ見える位置にあった。このプラスチック容器の発見までなぜ4日もかかったのかと。これだけの捜査員で朝から晩まで捜索して、最初の3日間でなぜ見つけることができなかったのかと。これには、非常に重大な疑惑が残る。過去の袴田事件の5点の衣類、狭山事件の万年筆に共通するような証拠のねつ造の疑いさえ残る内容だからである。このプラスチック容器からは一切指紋は検出されていない。またその容器はビニール袋に入っていたが、その袋にも指紋は付いてなかったのだ。
またこのプラスチック容器には、白アリ薬剤と書いてあった。もし林さんが犯人であれば、いかにも疑わしい容器を台所の戸を開けたらすぐ見える位置に置きっ放しにするだろうか。この家宅捜索は、10月に行われており、7月に起こった事件の後3カ月もの間、こんないわば犯人であれば、疑われる危険なものを置きっ放しにするだろうか。亜ヒ酸が入ったこんな危険なものをすぐ見つかる所に置いておくだろうかと。この容器が証拠である信憑性について疑わざるを得ないのである。
次にガレージで見つかった青色紙コップ(写真(k))について紹介する。この青色の紙コップは、林さんを有罪にした有力な証拠である。ガレージのゴミ袋から見つかった青色の紙コップにヒ素が付着していたことから、裁判所は林さんが自宅にあったヒ素をこの青色紙コップに入れて持ち出し、カレーに混入したと断定した。
このヒ素のついた青色の紙コップを一審、二審の弁護人が確認したのは白黒のコピーであった。しかし、弁護人の安田弁護士がカラーの証拠写真を確認したところ、青でなく白であったのだ(写真(l,m))。裁判所の判決文でも確かに「・・・本件青色紙コップの付着物は、亜ヒ酸であると判明し・・・」とあるように色は青と認定されている。
検察に保管されていた証拠の紙コップは、上の写真を見て分かるように白である。なぜ鑑定は青色のコップだとしたのか。このコップからヒ素が出てきたということである。このコップ自体が本当にガレージにあったものなのかも疑問視せざるを得ない。