１９６７年８月３０日朝、茨城県北相馬郡利根町布川で、独り暮らしの大工兼金貸しの男性（当時６２歳）が、両足をタオルとワイシャツで縛られた上、首に巻きつけられたパンツを口に押し込まれた状態で発見された。茨城県警取手警察署による死体検視と現場検証により、男性の死因は、絞殺による窒息死、死亡推定時間８月２８日１９時から２３時頃とされた。

　現場は、玄関及び窓が施錠されていたが、勝手口はわずかに開いており、室内には物色された跡もあり、指紋４３点が採取されたほか、男性が普段使用していた「白い財布」が発見されず、現金などが盗まれた可能性があった。

　そして、男性の自宅付近では、２０時頃、不審な２人の男性の目撃情報があり、この情報から、１９６７年１０月、近くに住む桜井昌司（さくらいしょうじ）さんと、杉山卓男（すぎやま たかお）さんが逮捕された。

　桜井さんは、高校中退後、定職にも就かず生活していたところ、１９６７年１０月１０日、友人のズボン１本を盗んだ容疑で別件逮捕され、本件強盗殺人について、１０月１５日、「杉山と一緒に殺して金を盗った」と自白した。

　杉山さんは、高校退学後、機械工をしていたが、１９歳の時、乱闘騒ぎで保護観察処分を受けていたほか、恐喝や喧嘩が日常となっていたところ、桜井さんの自白を受け、同年８月に起こした暴力行為事件で別件逮捕され、翌１７日、桜井さん同様に強盗殺人を自白した。

　公判において、桜井さんと杉山さんは、「自白は強要されたもの」として全面否認したが、１９７０年１０月６日、第一審無期懲役判決、１９７３年１２月２０日、第二審控訴棄却、１９７８年７月３日、最高裁において上告棄却され、２人共に無期懲役が確定した。

　２人は、収監中の１９８３年１２月２３日、第一次再審請求するも棄却、１９９６年１１月の仮釈放後も無実を訴え続け、２００１年１２月６日に第二次再審請求を申立て、２００５年９月２１日に再審開始が決定された。

　２０１０年７月９日、再審第１回公判が開かれ、以降６回の公判が行われ、２０１１年５月２４日、判決公判が行われた。判決では、自白について、「その中心部分が死体の客観的状況と矛盾」、「捜査官の誘導に迎合したと疑われる点が多数存在」と認定された他、目撃証言を含む全ての状況証拠についても、「周囲が暗くなっている当時の状況などから、２人と特定できない」などとその能力及び信用性が否定され、２人は、強盗殺人罪について無罪、別件の窃盗罪や暴行罪について懲役２年・執行猶予３年の判決が言い渡された。

　これに対し検察側は、新たな立証は困難として控訴を断念、無罪判決が確定した。本事件では、再審無罪までに４４年を要しており、これは戦後最長である。

　なお、事件をテーマにした映画作品には、井手洋子監督「ショージとタカオ」がある。