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今市事件 冤罪事件である根拠

①犯行現場、犯行時間の不可解な変更

 一審で検察は殺害現場について、有希さんの遺体が発見された山林としていた。これは、勝又さんの自白からの判断だ。

(「崩れたシナリオ ~検証・今市事件~」から テレビ朝日 2018年7月15日放送)

 しかし、勝又さんの自白内容は、現場に残された血痕状況と矛盾するのだ。捜査資料には、殺害現場の血痕採取状況が記されており、これによれば、勝又さんは、有希さんを立たせたまま10回刺したと自白している。

 

 そして、検察は一審で遺体遺棄現場のルミノール検査の写真を提示した。現場には目に見える血痕が多数あることをもって殺害現場の証明としていた。そして判決も殺害現場には少なくない量の被害者の血液が流出していると検察側の主張を認めたのである。

(「崩れたシナリオ ~検証・今市事件~」から テレビ朝日 2018年7月15日放送)

 同一審判決を受け、控訴審で弁護団は、吉田教授とともに、殺害現場をされた場所で実際にルミノール検査を行った。その結果は、何と一審で示されたルミノール写真というのは、信じられないことに血痕ではなく、落ち葉が光っている所を示したものであることが判明したのだ。

 

 これには、ずさんを通り越してあきれるほか無い。そして、この殺害現場とされた林道から採取された血痕は、10か所あったのだが、実際に被害者のDNA型と一致したのは2か所だけだったのである。

(「崩れたシナリオ ~検証・今市事件~」から テレビ朝日 2018年7月15日放送)

 この実験の結果、当初、犯行場所とされた場所に、被害者の血液の量、DNAの痕跡があまりに少ないことから、この場所が犯行現場でないとほぼ確定したのだ。弁護側の立証により事実上、山林での殺害という自白内容ストーリーは崩れたことになった。

 

 すると東京高裁は、驚くべき提案をする。検察側に殺害現場の変更を促したのだ。そのため検察は、犯行現場をこれまで主張してきた山林から、栃木県内、茨城県内、それらの周辺まで拡大するというとんでもない変更をしたのである。これは、すなわち、犯行現場を特定できないと言っているも同然である。

 

 さらに殺害時刻も、2005年12月2日午前4時頃としていたものを、この時間から被害者の行方がわからなくなった12月1日の午後2時38分頃までとして、約13時間も広げたのだ。そして裁判所もこれを認めた。そのような殺人事件で有罪判決など普通に考えてあり得ない。

(「崩れたシナリオ ~検証・今市事件~」から テレビ朝日 2018年7月15日放送)
(「崩れたシナリオ ~検証・今市事件~」から テレビ朝日 2018年7月15日放送)

 元東京高裁判事の木谷氏は、テレビ朝日のインタビューで控訴審での訴因変更の決定について、一審を全否定するものだと強く批判する。

 

 

木谷氏

「一審において検事は、この場所(山林)で被告人が殺したということを強烈に主張している訳ですよ。それ以外のことを言っていないわけですよ。だからその場所で殺していないということを(検察が)言えば、それは被告人は犯人じゃないということになるわけですよ。普通の考え方で言えば、これはやっぱり裁判員制度の根幹を揺るがすとんでもない決定だというふうに思いますね」(「崩れたシナリオ ~検証・今市事件~」から テレビ朝日 2018年7月15日放送)

 

 

(「崩れたシナリオ ~検証・今市事件~」から テレビ朝日 2018年7月15日放送)