袴田事件 その2
事件の考察 ②逃走ルート裏木戸写真のねつ造
さらに、裁判での争点となっているのが「逃走ルートとされた裏木戸からの逃走の可否」である。判決において袴田さんは、現場から脱出するために合計3回、“裏木戸”を通過したことになっている。
しかも、この裏木戸の上部についていた留め金をつけたまま、戸をしならせ、その隙間から脱出したことになっている。しかし、この逃走経路とされた裏木戸はかなり頑丈であった。上部の留め金をつけたまま、戸をこじ開けて逃走することは、物理的に可能だったのだろうか。
この件につき、警察は実験の結果「可能である」として、証拠写真も提出している(写真①)。確かにこの写真だけを見ると、戸をこじ開けて通行可能に見える。
裏木戸と金具についてイラストで今一度確認すると
上のイラストの裏木戸の上の留め金Aをかけたまま、袴田さんは戸の下の方から脱出、侵入が可能だったということである。
この警察の再現実験に対して、弁護団が“味噌漬け衣類”同様に、この裏木戸についても材木(杉材)や金具も年代を確認した上で全く同じ戸を作成して再現実験を行った。
以下の再現事件の2枚の写真をご覧頂きたい。
東洋大学の再現実験の写真の通り、上の留め金を止めたまま、人が通れる隙間はできなかったのである。
また弁護団の再現実験の写真の通り、逆に人を挟んでどんなに戸を閉めてみても、上の留め金をかけることは出来なかったのである。
つまり裏木戸の上部についていた留め金をつけたまま、戸をしならせ、その隙間から脱出することは出来なかったのである。
では、警察の提出した証拠写真は一体どういうことだったのか。弁護団は、この警察の提出した証拠写真について画像解析を行った。
その結果、警察の実験写真は、画像の粗さから、以下の右の写真の一部を切り取り、引き伸ばされたものであることがわかったのである。
この警察の実験写真については、以下の鑑定の結果も紹介する。
宇宙写真解析の権威とされている画像工学研究所の西尾元充氏によって警察の実験写真の上の部分の復元を行った鑑定においては、①の写真のように人が戸に挟まった状態では、上の留め金の部分は、以下の写真のように4.68センチもの間があいていることが判明した。つまり留め金は外れていたという鑑定が出たのである。
警察による裏木戸写真のねつ造の可能性は限りなく高い。