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袴田さん、散歩が「仕事」 精神的に不安定、今も 釈放から5年

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190319-00000049-mai-soci

袴田さん、散歩が「仕事」 精神的に不安定、今も 釈放から5年
3/19(火) 18:22配信 毎日新聞

 

 1966年に静岡市で起きた「袴田事件」で、死刑が確定した袴田巌元被告(83)=最高裁で特別抗告審中=が静岡地裁の再審開始決定で釈放されてから、27日で5年となる。東京高裁による昨年6月の地裁決定取り消しで再審開始への道のりが険しくなる中、袴田さんは姉の秀子さん(86)と地元の浜松市で暮らす。袴田さんは街を歩くことを日課としており、その姿は今や日常風景だ。

 

 「ご飯食べる?」。3月上旬のある夜、秀子さんが帰宅した袴田さんの顔をのぞきこんだ。誕生日が2月と3月の2人のため、支援者らが企画したお祝いの会。袴田さんは途中で外出し、お開きになった後に帰宅した。

 

 袴田さんは街を歩くことを「仕事」と呼ぶ。毎日数時間、決まったルートを黙々と歩き、時折考えごとをするようにつぶやく。「(長期の拘束による)拘禁症の影響と思う。一緒に暮らして、半世紀の長さを実感した」。秀子さんは語る。

 

 地裁は2014年に犯行時の着衣とされる衣類のDNA型鑑定結果などを新証拠と認めて再審開始を決定。死刑と拘置の執行を停止し、袴田さんは47年7カ月ぶりに釈放された。

 

 「秀子だけがこの48年間、無罪を信じてくれたんだ」。釈放直後はこう支援者に語ったこともあったが、死刑の執行が多いとされる午前中は今も精神的に不安定になるなど、長期にわたる拘置の影響がみられる。一方で、子どもに小遣いをあげたり他人を気遣ったりする場面が増えるなど、秀子さんは5年間での良い変化も感じる。

 

 袴田さんの健康状態などを理由に釈放維持を決めた高裁の判断に対し、検察は再収監を求める意見書を最高裁に提出した。弁護団の伊豆田悦義弁護士は「この状態からの再収監は死刑より残酷だ」と指摘。弁護団は再収監阻止のため、20日に刑の執行免除を求めて恩赦を出願する。

 

 秀子さんは言う。「(再審請求を棄却する高裁決定は)がっかりしたが、先の心配より一緒にいられる今を大切にしたい。50年でだめなら100年闘って勝つしかない」

 

【古川幸奈】