コラム凡語:袴田さん
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180615-00000012-kyt-soci
コラム凡語:袴田さん
6/15(金) 16:00配信 京都新聞
強盗殺人事件の裁判で被告の犯行時の着衣は事実認定を左右する証拠になる。付着した血痕や汗などが犯行を裏付けることがあるからだ
▼だが、裁判開始後に衣服が別の物だったとなれば話は違う。52年前の「袴田事件」ではそれが起きた。起訴された袴田巌さんの衣服は当初パジャマだったが、途中で別のシャツなどになった。起訴状にも自白にもないのに検察は「途中で着替えた」と主張した
▼不自然なことが多い袴田事件で、静岡地裁の再審決定を東京高裁が取り消した。地裁はシャツなどの証拠を「捜査機関の捏造(ねつぞう)の可能性がある」と指摘したが、高裁は「根拠に乏しい」と退けた。地裁が採用したDNA鑑定も「信用できない」と突っぱねた
▼弁護団に「捏造なら証拠を出せ」「DNA鑑定が信用できるなら証明しろ」と言わんばかりである。疑いがあれば被告人の利益に、という刑事裁判の原則はどこにいったのか
▼死刑判決を出した最初の裁判は、供述調書45通のうち、44通を不採用にした。強引な取り調べが明白だったからだ
▼東京高裁は死刑と拘置の停止は取り消さなかった。裁判官は自信がなかったのだろう。弁護団はそう指摘する。再審は何としても認めたくない。そんな国家のメンツが、82歳の袴田さんの人生より優先されたのだろうか。
[京都新聞 2018年06月15日掲載]