名張毒ぶどう酒事件 その4
2、王冠の傷
次に、死刑判決の決め手となった最大で唯一の物証となっている王冠の傷について考えてみたい。
この王冠の傷についての鑑定にも重大な疑惑があるのである。
奥西さんは、逮捕されたときにぶどう酒の王冠を歯で噛んで開けたと自白したことになっている。
これは、裁判で採用された松倉豊治教授の王冠の鑑定の写真である。
現場から見つかった証拠の王冠の傷の一つ(右)が、奥西さんが捜査中に再現で王冠を噛んでできた傷(左)と一致するとして、上のような写真が提出されている。
確かにこの写真では奥西さんの歯形と公民館から発見された王冠の傷がよく似ているように見える。
ところが後に重大な事実が発覚する。なんと上の二つの写真の倍率が2倍も違っていた疑いが強まったのである。
実際には
ではなく
であったということだ・・・。
この写真では、形は似ているが大きさが全く違うのである。どう考えても同じ歯形と言え無いだろう。
さらに弁護団は、王冠の傷跡を平面写真では比較するだけでは不十分と考え、この王冠の最新の科学技術の鑑定を日本大学の土生博義助教授に依頼した。土生教授は、王冠について最新技術を使った三次元解析を行って、二つの王冠の傷を比較したのである。