名張毒ぶどう酒事件 その2
では、順に。
1、ニッカリンTの様々な矛盾
1)ニッカリンTの色(赤)についての矛盾
まず事件の懇親会で出されたぶどう酒の色は白であった。それに対して、犯行に使われたとされる奥西さんの家にあったニッカリンTの色は赤であったことが再審において明らかになっている。
事件で使われたとされる農薬の「ニッカリンT」と同じもの。赤色であることが表記されている
白のぶどう酒に赤のニッカリンT(左写真)を入れていたなら、ワインの色が明らかに赤っぽくなることが弁護団の実験で証明された(右写真)。
上の写真の通り、明らかに白ワインの色が赤色の変化している
しかし、生き残った人は全員、出されたぶどう酒の色は白だったと証言している。本当に赤いニッカリンTがぶどう酒に混入されたのかと疑わざるを得ない。
しかも、事件の直前に奥西さんは公民館で村の女性Fさんからぶどう酒の色を聞かれて、その際に包装紙を外して見せているのである。そしてそのぶどう酒を見たFさんは「白やなあ、美味しいなあ」と言ったと証言している(この証言は、昭和三十六年四月八日付検察官調書に記載もされている)。
もし奥西さんが犯人であれば、赤のニッカリンTをワインの中に入れた後、わざわざ包装紙を外してまで、ワインの色を、これからその毒入りワインを飲ませるであろう女性に見せるだろうか。
万一不審な点を見抜かれたら、まずいことになると考えるのが普通だろう。この点は不自然としか言いようがない。この矛盾は放置されたままである。
2)ニッカリンTの瓶が見つかっていない
このニッカリンTの瓶は、奥西さんの供述では、名張川に投げ込んだとされた。4月3日に三重県警捜査本部16人と地元消防団員45人が動員されて、かなり大掛かりな名張川の捜索を行ったが、瓶らしきものは見つからなかった。12日まで捜索は行われたが結局何も瓶らしきものは一切見つからなかった。